「白銀の墟 玄の月(三)十二国記」 小野不由美

 今回もネタバレありです。

 ついに物語が大きく動き始めました。

 まず、第二巻で私が心配していた不穏な気配には泰麒も耶利も気づいていて、序盤に手を打ってくれたのでひと安心。
 妖魔の仕業だというのはわかっていたけれど、しかしなぜ妖魔が王宮にいるのかと。
 そこに出てきた名前が琅燦。

 第二巻の感想で、琅燦黒幕説を思いついたと書いたのですが、これがわりと当たっていてびっくり。
 正確には黒幕とは言えないものの、謀反を考える阿選の背中を押したのは本当に琅燦だったようです。
 動機も、彼女の言葉が100%真実なら、私が予想でだいたいあってる感じ。

 いやぁ……予想(というか妄想)が当たっていたのは嬉しいんですけど、琅燦は常識人であってほしかったからなんか残念。
 泰麒のよき理解者であり、支えになってほしかったんだけどなぁ。
 まあ、最終巻でどうなるかはわかりませんが。

 その琅燦はかつて、幼い泰麒の麒麟としての能力を「化物」と評したことがありましたが、この巻で再びその台詞を目にすることになりました。
 ただ、今回は麒麟の能力ではなく、泰麒の意志の力ですが。
 琅燦の言葉を借りれば「化物じみた意志の力で不可能を可能にした」。

 天の摂理を強引に捻じ伏せた精神力には驚かされましたが、それが天の不興を買って命を落とすことになりはしないかとひやひやしました。
 何しろ、王は死んでも麒麟は生き残るけれど、麒麟が死んだら王も死ぬ世界。王が死んだら元も子もないのだから……と思ったのですが、今の泰麒には民を救うためならそれも辞さない冷徹さがありそうなので怖いです(泰麒は黒麒だけど、別の意味でも黒い麒麟だと思うw)
 が、再び琅燦の言葉を借りると「可能だったということは天が許容したということだろう」と。なるほど、そういう考え方もあるのか。
 とは言え、天の考えることはよくわからないので、今回の行動がのちのち仇にならなければいいのですが。

 この巻では偽王・阿選の内面が語られたり、行方不明だった人の消息が知れたりと、これまでのモヤモヤがだいぶ解消されたと思います。
 泰麒が「魔性の子」で描かれたエピソードに思いを馳せたのも感慨深かったです。蓬莱(日本)で高里要として生きていた頃の出来事は泰麒にとって何だったのか、夢幻のようなのか、なかったことになっているのか、その辺が気になっていたので。

 李斎たちによる王の捜索にも大きな進展がありましたし、第一巻・第二巻の鬱々とした雰囲気を吹き飛ばす勢いで物語は動き始めました。
 終盤についに登場したあの人には感動して思わず目頭が熱くなりましたが、実際にちょっとだけ泣いてしまったのは恵棟の魂の叫び。こんなに誠実な人を落胆させた阿選の罪は重いぞ。

 というわけで、怒涛の(と思われる)最終巻に取り掛かります。
(この巻のカバーイラストって李斎だったんだね。誰だろうと思ってたw)

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