「千年鬼」 西條奈加

 小売酒屋に奉公している幸介の前に、三人の異相の子どもが現れる。
 彼らは「過去見の鬼」と名乗り、食べ物をくれた礼に幸介に過去世を見せると言う。

 恋人を失った傷心の織里姫の前に、過去見の鬼たちが現れる。
 過去見の鬼は針売りのお針婆の前に。
 妻子を守るため、鬼にならんとする駒三の前に。

 過去世を見た彼らはそれぞれに何らかの救いを得、それによって吐き出された「鬼の芽」を過去見の鬼が回収する。

 鬼の芽とは何なのか。
 なぜ過去見の鬼たちは鬼の芽を集めているのか。

 それらが明らかになったとき、「え、そういうこと?」と、思わず最初から読み返したくなった。
 我慢したけど。
 我慢して、最後まで読んですぐに最初から読み返した。なるほど、そういうことなのか。

 物語の前半に漂っていた、哀しいなかにもほのぼのとした心温まる雰囲気は、後半になって一変する。
 助けたいという純粋な思いは悲劇を呼び、そこから救いたい一心の行いは更なる悲劇を生む。
 可愛らしい表紙にすっかり騙されたけれど、これは気の遠くなるような時の流れと贖罪の過酷な物語なのだ。
 しかし、本人に罰せられている自覚のない罰は、果たして罰と呼べるのだろうか?

 ラストシーンにも疑問が残る。
 疑問と言うか、これを額面通りに受け取って良いものだろうか、という疑念だ。
 額面通りに受け取れば希望が見える終わり方と言えるが、どうも私にはそうは思えなかった。
 砂漠の砂を延々と選り分け続ける様は無知ゆえの無邪気な妄執にしか私には見えない。だから、その先に落とし穴があるような気がしてならない。

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