「幻想短編集」 堀川アサコ

 「幻想郵便局」から始まる本シリーズのタイトルは、すべて「幻想+漢字3文字」で統一されています。
 「幻想映画館」「幻想日記店」「幻想探偵社」「幻想温泉郷」……どれもノスタルジックな雰囲気があって素敵です。

 そのタイトルの法則が本作では「幻想+カタカナ語」となっていて、たとえば「幻想オルゴール」なんて夢のような響きでファンタジー好きの心をくすぐりますし、「幻想スパムメール」は何やらホラーな香りがいたします。
 でも。
 「幻想モカロール」って何??
 「幻想カンガルー」とは???
 目次を眺めて頭の中が「?」でいっぱいになった私は、読みかけの本を横に置いて本書のページを捲り始めたのであります。

 シリーズでお馴染みの、あの世とこの世の狭間に位置する登天郵便局に配達された「出されなかった手紙」。
 手紙の幽霊とでも言うべきそれを起点に始まる物語に巻き込まれたり首を突っ込んだりするのは「幻想探偵社」の主人公・楠本ユカリと、元ヤンキーで元幽霊の探偵・大島ちゃん。

 そんなふたりの前に、1作目で怨霊として登場し、2作目で成仏した真理子さんが現れたではありませんか!
 これにはびっくり。
 実は私、真理子さん亡きあと(いや、最初から亡くなってたけど)、そのポジションに来たのが大島ちゃんだと思っていたのです。お騒がせだけれど憎めないところが似ているし。
 それが、まさかの真理子さん復活。わたし的には夢の共演です。

 1話目の「幻想ハイヒール」では真理子さんの半生が明らかになって、それはなかなか強烈なものでしたが、シリーズ通して読んでいる人は真理子さんの人柄や殺された理由も知っているわけで、予想外というわけではなかったかな。むしろ、ああね~と苦笑いする感じ。
 でも、終盤は泣きそうになりました。

 真理子さんに代表される恋愛がらみの話の他、家族の絆を描いた作品やいじめ問題に触れた作品など様々ですが、基本的に楽しく読めるのは、主人公のユカリが楽天的な少女だからでしょう。強か、もしくは懲りないとも言うのかもしれないけれど。
 ユカリの一人称の語り口も愉快なので、読みながら「んふっ」と変な鼻息が漏れることが多々あるのですが、そのノリで読んでいると不意打ちのようにホロッとさせられたり、時にはヒヤッとさせられたりするのも本書の特徴です。
 特に最終話の「幻想ラブレター」はシリーズの中で最も泣けたと言って過言ではありません。

 さて、「幻想モカロール」と「幻想カンガルー」がどんなお話かは読んでのお楽しみということで。
 歴代作品の面々が登場する本作は、できればシリーズ全部、少なくとも「幻想郵便局」「幻想映画館」「幻想探偵社」の3作は読んでおいたほうが楽しめると思います。
 と言うか、シリーズ未読の人は本書を読み終わったあとにきっと他の作品も読みたくなることでしょう。

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