「三人の大叔母と幽霊屋敷」

 予言村シリーズの3作目。
 今回は3つのお話からなる連作短編集となっています。

 1作目では本当に存在するのかすら怪しい感じだった予言暦。
 こよみ村で起こる未来の出来事が記されているという予言暦(主人公・奈央の父親が村長になることも記されていたという)の存在が、ついに公のものになってしまいました。

 しかも、予言暦に深く関わっていた人の家族が、村長さんに預けましたーと公衆の面前で言っちゃったものだからさあ大変。
 未来を知りたい村民たちが奈央の家に押しかけてくる事態に。

 押しかけてきたのは数名だけれど、これがね、何と言うか、それぞれに浅ましいのですよ。
 小さなこよみ村の中には、村にバイパスを通して生活を便利にしたい開発推進派と現状維持を主張する自然派とがあって、劣勢にある開発推進派が未来を知りたがったり。
 うちの優秀な息子ちゃんが司法試験に合格してるか知りたいママンがしつこく食いついてきたり。ロミオとジュリエット的な恋人たちがやって来たり。

 まあ、未来を知りたいという気持ちはわかるんだけど、みんな必死すぎて怖いんですよぅ。視野狭窄で話が通じなくなっちゃってる感じ。話が通じないだけならまだしも、予言暦を見たいあまりに実力行使に出ちゃう人まで現れる始末。
 未来なんか知らないほうがいいよ知ったら絶望するよ、という中学2年生の奈央が一番冷静ですわ。

 前2作と同様、今回も奈央と彼氏の麒麟(すごい名前だけど元アイドルの息子でイケメン)が、中学生とは思えない発想力と行動力で大活躍します。

 このふたり、付き合い始めてからそれほど経ってないんだけど、全然キャッキャウフフしたところがないんですよね。むしろ長年連れ添った夫婦の枯れた安定感すら感じさせます。
 いや、いいんだけど。まったく問題ないんだけど。むしろキャッキャウフフされたら鬱陶しくて仕方ないだろうし。
 ふたりがこういう感じだから、恋愛感情に振り回される大人が余計に滑稽に見えるんだろうし。

 さて。
 表題作の「三人の大叔母と幽霊屋敷」はと言うと。

 まずね、「大叔母」という言葉の響き。これが控えめに言ってもトラブルの予感しかしないわけです。それが「三人」で、更に「幽霊屋敷」ですよ。
 どんな恐ろしい(笑)ことが繰り広げられるのかと思ったら……ちょっと、想像していた雰囲気とは違いました。

 前作までにもこの口やかましい三人の大叔母さんは出てきていたのですが、三人とも奈央の住んでいる家を自分たちの家だと言い張っているわりには、夜になる前にそそくさと帰ってしまうんです。
 どうも、こよみ村で夜を迎えるのを怖がっているようだ……というところが前作まで。今作では大叔母さんたちが夜を恐れる理由が明らかになります。

 これまでの大叔母さんたちは典型的な「嫁いびりが生きがいの姑」で、奈央のお母さんとは折り合いが悪くて、「なんだこいつらまったくもー」と私も読みながら憤慨していたわけですが、今作では大叔母さんたちよりも大叔母(長女)の息子が鬱陶しくて面倒臭くてイライラした~!

 作者の堀川先生は身勝手な論理を振り回す面倒臭い人物を描く腕を上げられたんじゃないかという気がします。堀川作品は他のシリーズも読んでいますが、ここまでムカついたことってなかったもの。それも複数人も。
 おかげで大叔母さんたちの毒は薄まった感がありますが、それはストーリー上、当然の流れではあったかも。

 これで1作目からのシリーズ通しての謎は解けてしまった(と思う)ので、この先の展開が気になります。
 今回もあったけど、麒麟がやっている郷土史調査で怪しい伝承がぼこぼこ発掘されればいいのにと期待。

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