2012年01月16日

「名もなき毒」

 「誰か―Somebody」の続編なのですが、この前作ってやつがなかなかの曲者でねえ。曲者と言うか、後味の悪い作品だったですよ。
 正直、内容はもうよく憶えてないんだけど、後味の悪さだけは残ってる。何かこう、やっちまったな主人公、みたいな。余計なことしなけりゃ、正しくはないかもしれないけど保たれてはいたバランスが崩れることはなかったのに……みたいな。

 で、今作もそのやっちまった主人公が主人公なのです。杉村三郎。三十数歳。大金持ちの娘と結婚した普通の人。嫁の父親の会社で働かされてるけど婿養子じゃないよ。

 この杉村は本当に普通の人なので、清濁併せ持っています。小心だったり大胆だったり。姑息だったり真正直だったり。卑屈だったり上から目線だったり。存在がリアルなのです。それも、こういう人いるよねーっていうよりは、誰でもこういう部分を必ず持ってるよね、っていうリアルさ。
 それが私には耐えられなかった。生々しすぎて。要するに好きじゃないんです、この主人公。

 物語も本当にありそうな感じで気持ち悪かった。面白かったんだけど。
 前作もそうでしたが、宮部さんは巧いから、いや〜な感じの話でもするする読めちゃうのですよね。
 人が心に潜ませている毒を見せつけられて、それがすごく嫌で、ホントもう見たくないんだけど、見届けずにはいられないという。
 もちろん、どよーんとするようなことばかりじゃないですけど。明るい雰囲気の場面もあるわけで、そういう塩梅が巧いんだろうなあ。

 というわけで、前作よりは後味悪くなかったかな。

 最後にひとつ、「原田」という姓をなぜわざわざ「げんだ」と読ませたのか謎。平凡に見えて実はそうではないという暗示?

posted by nakaji at 15:25 | Comment(0) | TB(0) | 読書記録>フィクション
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